「債権回収」「法律事務所」「弁護士」という言葉を聞くと、なんだかものものしいですね。
これまで相手とおつきあいがある場合、あまりいかめしい手段では、回収しずらいかと思います。
そこで、ここでは法的な手段以外で、債権を回収するために大切なことをご説明します。

何よりも予防が大事!

人間でも、日頃の健康管理をちゃんとして、病気にならないようにするのが大事。
債権管理も同じことで、ふだんから、焦げ付きを発生させないようにすることが大事です。
また、相手との取り決めに不明瞭なことがないようにしておく必要があります。

  • お金を貸すならば、借用証をつくっておく
  • いつ、いくら貸したか
  • 利息は取るのか、取らないのか。取るとしたら、年何%にするのか
  • 返済は、いつ、いくらするのか
  • もし、約束どおりに返せなかったら、どうするのか

こういったことを、きちんと書面で残しておく必要があります。

債務承認弁済契約書 >

「親しい仲なのにそんな大げさな」と思われるかも知れません。でも、親しいからこそ、きちんと決めておくことが重要です。
借用証がきちんとあれば、相手も「お金ができたらそのうちに返そう」という気楽な考えでなく「期日までに、いくらいくらを用意しなければ」という気持ちになります。
また、返済の期日と金額がきちんと決まっていれば、「いつ返してくれるんだろう」なんてヤキモキすることもありません。
万一、期日に返済してもらえないときも、あまり感情的にならずに、淡々と「どうなってる?」って聞けるものです。

取引の場合も、考え方の基本は同じです。
まず、取引をするときから、取引の内容を書面にしておくこと。
契約書を締結するのが一番いいですが、せめて、見積書・発注書・受注書などは取り交わしましょう。

そして、

  • いつ、どんな商品を売ったか、あるいは仕事をしたか
  • 代金はどのようにして決まり、いつ、どうやって支払ってもらうのか

こういうことを、きちんと書いて残しておきましょう。

支払期日の前には連絡をする。

支払期日の1週間くらい前には「月日が、支払日ですので、念のためご連絡します」といって、丁寧に連絡をしておきましょう。
こういう小さなことの積み重ねが、相手に「きちんとしたところだな。いい加減なことはできないな」という気持ちを抱かせ、たくさんある支払先の中で、あなたのところを優先してくれることにつながるのです。

入金がない場合にはすぐ連絡をする。

支払い日には、必ず入金があったかどうかを確認しましょう。そして、入金があったら、領収書をちゃんとつくって送っておきましょう。

そして、入金がない場合には、迅速に、丁寧に連絡をします。
うっかり忘れ、てちがい、ということもありますし、今後のおつきあいもありますから、丁寧であることは忘れないように。

「いきちがいがあったら申し訳ありませんが、こちらでは入金が確認できていません」

遠慮なく、はっきりと、迅速に、ていねいに。
こういう基本的なことをきちんとする人・きちんとする会社のことは、なかなか粗略には扱えないものです。

同時に、支払が遅れるならば、次にお支払いいただけるのはいつか、きちんと約束してもらいましょう。
遅れた場合の、損害金の約束があるならば、それもあわせて事務的に請求します。これも、口約束でなく、書面にしておくことが大事です。

もし先方が書面を出してくれないならば、こちらから。
「先ほどはお電話で失礼しました」とのことばと共に「○月○日に○○円お支払いいただけるとのこと。よろしくお願い申し上げます」として、ファクスを流しておきます。メールでも手紙でも構いません。そして、先方が連絡を受け取ったことを、改めて確認しておくと、言った言わないの争いを未然に防ぐことができます。

面談を求める。

電話や書面だけでは、らちがあかない場合には、先方を訪ねます。
何度でも、根気強く訪ねます。
担当者だけでなく、責任者たる上司に面会を求めましょう。

繰り返す。

電話連絡にせよ訪問にせよ、一度だけでめげてはダメです。
根気くらべと思って、毎日、時間を決めて定期便でじっくりと。
こちらがつらいときは、相手もしんどいものです。
こんな思いをするくらいなら、支払おう、と思ってもらえるようにがんばりましょう。

相手の事情も考慮する。

突発的な事情で、先方が約束を守れなかったときには、そのことを考慮してあげる方が感謝されて、次の支払をスムーズにしてもらえるケースも多々あります。
たとえば、次回に2回分を支払うことを認めてあげるとか、今回支払えなかった分を、全体の支払にとけ込ませて、数回の分割払いにしてあげるなどです。
ただ、あまり安易にこれをしては、それ以後の支払方法があいまいになり、かえってよくないこともあります。
例外的な支払方法を認める場合は、担保や保証人を立ててもらうのがよいでしょう。

弁護士にアドバイスを求める。

以上のようなことをきちんと丁寧にするのは、言うは易く行うは難し、という面もあり、時間も事務手間も心労もあるものです。
そんな場合は、弁護士に相談してみることをお勧めします。
相談だけなら費用も、5000円から1万円程度(当事務所は初回は無料です)。
内容証明など出してもらっても、数万円程度ですむことがほとんです。
弁護士に相談したからといって、すぐに法的な措置をとる、というわけのものでもありません。
弁護士が電話で、「○○さんが、考えあぐねて相談にいらしてるんだけど、支払いしてあげてくれませんか」と話すだけで、先方もことの重大さに気づいて、すぐに対応してくれる、などということもよくあります。

それでも進展しない時は…

ここまで述べたことを実践しても、どうにもならない場合には、もはや法的措置を考えるべき時期になっているでしょう。
コストを考えて、どんな法的措置をとるべきか、弁護士のアドバイスを受けてください。