ある台所用品問屋で膨大な数の小口債権を回収

台所用品の問屋さんが持っていた債権回収のお話です。
この会社は、社長さんの健康状態のために、会社を閉じることになり、それに際して、売掛金をすべて回収しなければならないことになりました。
包丁とかお鍋とかフライパンとか、そんな品物を町の小売店に注文がある都度運んで納入する、しかも掛け売り、というご商売でした。1件あたり5万円~20万円くらいの小口の売掛金が1500件以上もありました。
こういう場合は、ITの力を駆使する必要があります。

膨大な数の小口売掛先をデータベース化

帳簿類はすべて手書きでしたので、まず紙ベースでそれを整理して、入力代行業者さんに依頼して、エクセルで一覧表にしてもらいます。一件当たり150円程度でやってもらいました。
(一覧表のひな形はこちらをご参照ください)

このデータをもとに、すべての売掛先にご連絡です。
ただ、いろいろな事情で、こちらが把握している債権額と、お客様が払うべきと思っている金額がずれることがあります。たとえば、請求は毎月一定の日に締めて請求しますが、それ以降に納品していれば金額はふくらみます。逆に、お支払いいただいているのに、帳簿上、入金した先の消し込み作業が済んでいないこともあります。返品がされたのに、それが記録されていないこともあります。

少なく請求する分にはまだしも、支払い済みのものを請求して、お客様と無用のトラブルを起こしては、回収業務が滞ってしまいます。しかし、その突き合わせ作業をしていては、膨大な時間と手間がかかることもはっきりしています。

そこで、金額の確認は、お客様にお願いすることにして、ご連絡の際には次のようにしました。
まず、エクセルのデータを引用した差し込み印刷で、相手先様ごとに個別の通知をつくります。本文には以下の項目を記載しました。

お店を閉じることになって、ご迷惑をおかけすることに対しての誠実なお詫び。
それに際して、未精算のご請求をさせていただきたく、当方が把握している金額は○○○○円であること。
いかんせん急なことなので、完全な正確性が保たれているかどうかはわからない。どうぞ、疑問がある場合には、返信欄に記入して連絡をいただきたい、として当事務所のファクス番号を記載。
(※電話番号をこの部分に記載しなかったのは、電話が殺到して事務が停滞し、話し中ばかりであったり、お待たせしたりしては、お客様をおこらせてしまうかも知れないと思ったからです。)
問題がなければ、当事務所の専用預かり口座にご送金いただきたい、として口座番号を記載。振込手数料は控除していただいてよいこと。
(※ご入金いただける場合には、予定日をファクスでお知らせいただきたい、としました。)
相手様からご回答いただく項目は、下記のようになります。

支払意思の有無
支払予定金額(請求額と同じかどうか)
支払予定日
支払意思がない場合・減額する場合 理由(返品 品違い 不良 その他)
ご連絡先
ご担当者のお名前
そして送付が終わってからは、取引先からの回答を、毎日集計していきました。

対応が必要な売掛先には、すべて近藤が交渉

多くの方からは、「振込みする」という返信があり、どんどんお振り込みをいただけます。
記載された日に振込がなければ、確認のご連絡をします。
数字がちがうというお客様については、ご指摘いただいた点を確認して、お詫びと修正のご連絡をします。

しかし中には、突然に仕入れ先を失った、ということでお怒りになっている場合もあります。そういう場合には、社長に代わって誠心誠意のお詫びをし、また、適宜、値引きなどで対応します。

逆に、今後はつきあわないのだから、といって踏み倒そうとする方もおられます。そういう場合には、弁護士事務所としてのポジションを最大限利用して、強気の回収をいたします。

小口の債権の場合には、訴訟を起こすなどしていてはコスト面で引き合わないことも多いです。しかし、甘い対応をしていると「拒否すれば支払わずにすむ」というような噂が一気に業界内に広まって、次から次へと支払を拒絶してくることもあります。
したがって、不当な不払いに対しては、毅然と対応する必要があります。このことは、平時の債権管理でも同じで、時には、単体ではコスト割れでも訴訟や支払督促などの法的措置をとるべき場合があります。

約2ヶ月で95%以上の回収を達成

この件については、こうして1ヶ月以内に80%以上を回収しました。
次の一ヶ月でさらに約15%を回収し、回収率が95%を超えましたので、残る先については、大幅な値引きをするなどして回収しました。

社長ご夫妻は、無事に会社を清算することができ、現在はご夫妻で楽しく老後を楽しんでおられます。

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