- 依頼者 : 映画制作会社
- 相手方 : 映画の特撮処理を行う会社
納品物のクオリティが低くて返金を求めた
依頼者は、相手方の会社に対し、映画の特殊処理を委託しました。
しかし、相手方の仕事のレベルが劇場公開にふさわしいレベルに達しておらず、映画の制作が遅れ、また、一部分を別の業者に再委託しなければならなくなりました。
業務委託費用は、全額前払いしてありましたが、その返還を求めたいとのご相談でした。
社長同士の話し合いでは、埒があかず、当事務所にいらっしゃいました。
映画業界の慣行で、契約書が存在しない
最大の問題は契約書が存在しないことでした。
我が国のエンターテイメント産業においては、いまだに文書主義が浸透していません。口頭の約束があたりまえ。いつまでに、どのような業務を、どの水準で行わなければならないか、についてほとんど取り決めがありませんでした。
しかし、映画の劇場公開日は、まぢかに迫っており、
「水準に達しているかどうか」について長々と議論している時間はありませんでした。
直ちに、内容証明郵便で催告書を出しました。
その内容は「話し合いによる早期解決ならば半額はこれまでの作業料としてみとめるので、半額を返して欲しい。もし、そちらが、これを拒むならば、支払い済みの代金の全額の返還を求める。それだけではなく、映画の完成が遅れたことに基づいて発生した損害も支払ってもらう必要がある。」という内容にしました。
返済額をディスカウントすることで、短期間での支払を達成
相手方は、それまで、業界の慣例?にしたがい、口頭でやりとりを重ね、適当な手打ちを狙っていたものと思われました。
しかし、弁護士名で、かなり厳しい内容の催告書が内容証明郵便で届いたので、すぐに弁護士に相談されることになりました。
そして、先方からは、若干の値引き要求があり、当方がそれをのんで、極めて短時間に回収をすることができました。
そして、回収した費用を原資にして、別の業者に画像処理を依頼することができたのです。
ひと言コメント
映画関係の契約については、我が国の実情は「未開の荒野」といってよいと思います。
非常に多くの業務が、契約書なしで、単なる口約束で行われており、また、契約書を要求することは「話のわからない奴」「ものづくりを知らない奴」などとして白眼視すらされることがあるといいます。
本件もそうでしたが、他方で、極めて迅速に、まずまずの解決ができたのは、そのような「ざっくりした体質」ゆえだったかもしれません。
契約書がない、からといって、すぐにあきらめてしまわずに、できるだけのことはしてみるとよいとおもいます。